普及啓発

粒子線がん治療等に関する施設研究会

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粒子線(重粒子線・陽子線)がん治療は、高精度な治療技術に求められる所要の機器やシステムをはじめ、施設全体の設計、機器配置、建設、および遮蔽等さまざまな関連分野において、研究開発および技術的対応、規格基準の整備など、適確に対応していくことが求められております。さらにこれらは、実際の医療の臨床現場での治療技術とのインターフェイスが重視され、システムとしての調和や品質管理も重要となっております。
 「粒子線がん治療等に関する施設研究会」は、粒子線治療施設建設の視点から、 先行施設の実地調査を行うとともに、実際に治療に携わっている専門家から講義を受け、現状を把握した上で、普及に係る課題・対策の分析・ 検討に資するとともに、関係組織相互の情報の共有化をはかり、専門知識を有する人材育成をはじめ関連産業の育成・発展に寄与することを目的に実施しております。
 研究会会員は、設計、建設、装置製造、情報処理、保険等幅広い関連分野の技術者、研究者および実務者で構成され、国内外における粒子線がん治療等に関する医療情報、研究・技術開発動向、ならびに関連法令や技術基準の動向などの現状および将来見通しや課題・対策などに関して、講演および関連施設の見学および意見交換を行っております。

【 主査】

遠藤 真広 公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団 常務理事



【最新の活動報告】 会員登録についてはこちらをご確認下さい

「平成30年度粒子線がん治療等に関する施設研究会」第2回研究会


 「平成30年度第2回施設研究会」は平成30年9月20日(木)国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)にてホウ素中性子捕捉療法(BNCT)施設の見学会として開催しました。

 当日は、はじめに放射線治療科長 伊丹 純 先生よりご挨拶の後、放射線治療科 病棟医長 井垣 浩 先生から、ホウ素中性子捕捉療法の概要および国立がん研究センターの現状と将来展望についてご説明があり、その後、BNCT施設を見学させていただきました。

 井垣先生のご講義では、BNCTの原理、歴史、治療事例、実施条件、課題等が述べられ、原子炉を使ったBNCTでは、少数例ではあるが良好な臨床データが示されてきたこと、その後BNCTの中性子源は原子炉から加速器へとシフトし、現在国内数か所でプロジェクトが進められており、それぞれ異なる加速器やターゲットからなるシステムの研究・開発が行われていること等のご説明がありました。今後は病院設置型の加速器BNCTの普及により、施設数、治療患者数も増加が見込まれるとのことでした。

  国立がん研究センターにおける装置の概要および治験の予定については、以下に示すとおり説明がありました。

・装置の概要
 BNCT治療装置は、病院棟と研究棟にはさまれた診療棟に設置されています。中性子の発生に必要な高エネルギー陽子ビームは、RFQリニアックにより加速されます。加速器本体は、AccSys社、クライストロンはターレス社、電源はAmpegen社の製造ですが、これらすべてを含むBNCT治療装置全体をインテグレートして国立がん研究センターに納入したのはCICS社であり、同社は装置仕様に対して責任を持ち、長期にわたる調整をやり遂げました。

 診療棟の地下1階には、加速器(RFQリニアック)が設置され、地下2階には治療室があります。RFQリニアックから射出された陽子ビームは偏向電磁石により水平方向から垂直方向に90度曲げられ、治療室に導かれます。そこで、Liターゲットに衝突し、速中性子ビームとなります。そして、モデレータで減速され、熱外中性子となり患者に照射されます。診療棟地下2階は、放射線治療エリアであり、BNCT治療室以外にサイバーナイフVSI(ACCURAY社)、電子リニアックTrueBeam(Varian Medical Systems社)の治療室があり、多くの患者が治療を受けています。

 以下、装置の仕様、診療棟施設概要、整備工程概要、治験の予定を示します。責任者の伊丹先生によると、装置の調整に長期間を要したが、RFQリニアックでBNCTを行うことは、本当に新しい試みであったので、やむをえない面がある。ようやく、治験に必要な条件がクリアされたので、できるだけ早く、治験を始めたいとのことでした。粒子線治療装置に比べると、BNCT装置は、一般に一回り小型なのですが、RFQは現在、主流とされているサイクロトロンと比べてさらにコンパクトであり、実用化されれば、BNCTの普及は、より容易になるのではないかとの感想を持ちました。


<BNCT装置の仕様>

加速器室22×8.3×6.5m(地下1階)

加速器:RFQライナック

加速粒子:陽子

加速エネルギー:2.5MeV

加速電流20mA(CW)

イオン源:マイクロ波イオン源

高周波系:Klystron(330kW CW,400MHz)

臨床使用する電流値:12.0mA

治療室 8×8㎡(地下2階)

ターゲット物質:固体のLi

モデレータ:MgF2 (24cm厚)

中性子照射方向:垂直

中性子の制御:照射された陽子の電荷量

照射時間:1時間程度を想定

ターゲットは2.5×106mC照射したら交換(治療人数:50人程度)

<診療棟施設概要>

1.全体敷地面積

29,944.66m2

2.建築面積

1,027.95 m2

3.延べ床面積

11,215.44 m2

4.高さ

39.82m

5.階数

地下2階 地上9階

<整備工程概要>

1.建物設計・工事監理

株式会社横河建築設計事務所

2.建物工事施工者

建築工事  :佐藤工業株式会社  専門会社:技研興業株式会社

【分離発注】

電気設備工事:東光電気工事株式会社

管工事   :大成温調株式会社

昇降機工事 :大成温調株式会社【三菱】

3.建物工事

 工事施工期間

着工 平成23年11月28日

完成 平成25年12月31日

4.BNCTシステム搬入

平成26年12月~平成27年3月

5.BNCTシステム据付調整

平成27年 4月~平成27年8月

6.放射線障害防止法施設検査合格

平成27年11月18日

  以後、現在までビーム調整等の装置試験

<治験の予定>
皮膚腫瘍(悪性黒色腫、血管肉腫)を対象とした企業主導治験を予定している。
 ・治験プロトコール案はすでに完成
   今年6月にPMDA対面助言を実施済
 ・治療内容・適応などは筑波大学の治験となるべく共通に
 ・皮膚を線量制限組織としたdose escalationを予定
 ・今年度中の治療開始を目標



平成30年度粒子線がん治療等に関する施設研究会」第1回研究会


 「平成30年度第1回施設研究会」は平成30年5月26日(土)社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院(北海道札幌市)にて札幌高機能放射線治療センター - SAFRA(サフラ) - の見学会として開催しました。
 当日は、はじめに札幌高機能放射線治療センター センター長 岸 和史 先生と同センター中村大隆先生より札幌高機能放射線治療センターのご紹介および同センターが目指す医療についてご説明があった後、同センターを見学させていただきました。

 中村先生のご講演では、超電導を用いて加速器を小型化し(重量50トン)、また、ガントリーの小型化をはかり(重量90トン)、施設全体(遮蔽含む)をテニスコートに入るサイズとしたことが強く印象に残りました。また、岸先生はトモセラピー、サイバーナイフさらにIVRを組み合わせることにより、今まで見放されていた末期の患者の生命予後を大幅に改善できることを、実例を多数あげて強調されました。今後は、陽子線をこのためのツールに加えるとともに、放射線治療と相乗的な効果を持つ免疫療法(オプジーボなど)の併用を積極的に進めていきたいとのことでした。

プロテウスワン(ProteusOne) 病院外観

<札幌高機能放射線治療センターの特徴>
・国内15番目(北海道3番目)の陽子線がん治療施設
・総合病院に附属する粒子線施設
・陽子線、トモセラピー、サイバーナイフを全て有する日本で唯一の医療機関
・世界最高水準の最先端の治療装置(スキャニング照射、強度変調陽子線治療、画像誘導陽子線治療)
・IBA社の最新機種プロテウスワン(ProteusOne)を導入

<施設概要>
敷地面積:12,147.93㎡、建築面積:6,666.05㎡(治療棟771.46㎡)、延べ床面積:26,659.82㎡(治療棟1,772.17㎡)、高さ30.226m(治療棟13.0m)、治療棟:地上3階、鉄筋コンクリート鉄骨造(1F陽子線、サイバーナイフ、診察室、2Fトモセラピー、治療計画室、診察室、3Fスタッフエリア)治療室:225°回転ガントリー、病院棟:地上7階、地下1階、鉄筋コンクリート造(手術室8室, 術中3T MRI, Hybrid手術室, ダヴィンチ, CT 4台, MRI 2台, 血管撮影装置3台, PET-CT, SPECT, RI製造用サイクロトロン, ホットラボ室など)、「がん」「脳卒中」「心臓病」の三大疾病と運動器疾患を中心とした高度急性期の病院として最新の診断機器と治療設備を整備し、救急医療にも対応できる体制を構築している。

<粒子線装置概要>
加速器:シンクロサイクロトロン、イオン源:PIG source、出力エネルギー:230MeV、磁場強度:5.7T、照射エネルギー:100~230MeV、ビーム移送系:225°回転ガントリー
<治療装置概要>
最大照射野:アイソセンタ面で200×240㎜、線量率:飛程270㎜で1リットル(10㎝角)の照射体積に対して2Gyを120sec以下、レンジシフタ:水等価厚78㎜、治療台:6軸スカラー型ロボット、X線撮像システム、X線管及びFPD位置決め用 斜交2軸

<整備工程概要>
建物設計管理:竹中工務店北海道一級建築士事務所
建物施行者:竹中工務店・田中組 建設共同企業体
建物設計期間:2013年9月~2015年1月
建物建設期間:(第一期):2015年2月~2016年9月
建物建設期間:(第二期):2017年2月~2017年9月
装置製作:Ion Beam Applications SA(IBA ベルギー)
装置製造販売:セティ株式会社
装置設計出荷工期:2014年5月~2017年3月
装置搬入:2017年3月~2017年4月
装置据付調整:2017年5月~2018年2月
装置現地試験:2018年3月

<今後の予定>
クリニカルコミッショニング:2018年4月~
治療開始予定:2018年7月

<運営形態>
セティ株式会社:装置設備、保守等担当
社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院:医療、運営担当

<想定年間治療数>
想定年間治療数:500人
頭頚部腫瘍 150人(30%)、肺腫瘍 150人(30%)、骨盤肉腫(30%)、小児がん 50人(10%)

<高速スキャニング法>
PROTEUS ONEは、患者様への最適な陽子線治療を提供するため、最新の照射技術であるスキャニング法を採用している。スキャニング法は、細いビームを用いて3次元的に病巣を塗りつぶす様に照射する。この技術により、複雑な形状をした腫瘍にもフィットした最適な線量投与が可能になる。また、患者様毎の照射器具(ボ―ラス・コリメータ)が不要になるため、ARTが実施しやすくなると共に、照射装具作成や放射性廃棄物処理のコスト軽減にも繋がる。

 社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院は、現在(2018年5月1日)放射線障害防止法施設検査を合格しコミッショニングを実施しているところであり、2018年7月1日より治療開始の予定。粒子線治療のみならず高精度エネルギー放射線治療、および放射線生物学的治療を含むバランスのとれた総合的で最先端のがん治療の提供を目指す。



【これまでの主な活動内容】

開催日・会場

事業内容

報告書

講演会

平成30年2月15日
フクラシア八重洲

「日本におけるがんの陽子線治療」
(筑波大学附属病院 櫻井 英幸 氏)
「重粒子線がん治療の新たな展開―量子メス開発」
(放射線医学総合研究所 鎌田 正 氏)

施設見学会

平成29年12月2日

公益財団法人 大阪重粒子線がん治療財団(大阪府大阪市)

施設見学会

平成29年5月20日

社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院(長野県松本市)

講演会

平成29年2月8日
フクラシア東京ステーション

「世界の重粒子線施設の現状」
(放射線医学総合研究所 野田 耕司 氏)
 「日建設計における重粒子線がん治療施設設計の歩み」
(株式会社 日建設計 冨田彰次 氏)

施設見学会

平成28年12月17日

社会医療法人 禎心会 札幌禎心会病院(北海道札幌市)

施設見学会

平成28年06月04日

一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院(福島県郡山市)

施設見学会

平成28年03月10日

国立研究開発法人 放射線医学総合研究所(千葉県千葉市)

講演会

平成28年02月05日
フクラシア東京ステーション

「米国における日立の粒子線治療施設普及状況」 
(株式会社日立製作所 藤崎雄滋郎 氏)
「加速器BNCTの普及状況」 
(筑波大学 熊田博明 氏)

施設見学会

平成27年10月16日

一般財団法人津山慈風会 津山中央病院(岡山県津山市)

講演会

平成27年02月09日
フクラシア東京ステーション

「粒子線治療防護に関するICRP Publication」 
(放射線医学総合研究所 赤羽恵一 氏)
「世界の重粒子線がん治療施設の現状と今後の見通し」 
(放射線医学総合研究所 北川敦志 氏)

施設見学会

平成26年11月10日

神奈川県立がんセンター (神奈川県横浜市)

施設見学会

平成26年06月03日

京都大学原子炉実験所 (大阪府泉南郡熊取町)

講演会

平成26年02月05日
日本橋サンスカイルーム

「粒子線治療施設の遮蔽計算」
(高度情報科学技術研究機構 仁井田浩二 氏)
「粒子線治療施設における放射化物」
(放射線医学総合研究所 米内俊祐 氏)

施設見学会

平成25年10月22日

北海道大学陽子線治療施設(北海道札幌市)

施設見学会

平成25年05月10日

九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)

施設見学会

平成24年11月13日

慈泉会相澤病院陽子線治療センター(長野県松本市)

施設見学会

平成24年02月17日

名古屋市立西部医療センター(愛知県名古屋市)

施設見学会

平成23年12月04日

財団法人 メディポリス医学研究財団 がん粒子線治療研究センター
(鹿児島県指宿市)

講演会

平成23年11月07日
日本消防会館

「国立がん研究センター東病院の陽子線治療施設運用について」
(独立行政法人 国立がん研究センター東病院 西尾禎冶 氏)
「兵庫県粒子線医療センターの陽子線・炭素線施設運用について」
(兵庫県粒子線医療センター 須賀大作 氏)

講演会

平成23年07月25日
日本消防会館

「PTCOGの歴史」(財団法人 原子力安全技術センター 河内清光 氏)
「粒子線治療と歩んだ30年と今後の展望について」
(元 独立行政法人放射線医学総合研究所 辻井博彦氏)

研究会

平成23年03月03日

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター新治療研究棟の視察
講演 「粒子線治療施設の放射線安全管理システム―インターロックシステム、モニタリングシステムについて-」

講演会

平成22年08月23日
日本消防会館

「2025年における日本の高齢者肺癌の診療戦略 -放射線と外科の役割変化-」
(放射線医学総合研究所 宮本忠昭 氏)
(放射線医学総合研究所 飯沼  武 氏)
「重粒子線がん治療等の先進医療の医療経済的評価」
(東京医科歯科大学 川渕孝一 氏)

施設研究会

平成22年05月07日

福井県陽子線治療センター(福井県福井市)

講演会

平成21年11月19日
日本航空会館

「重粒子線がん治療の現状」
(独立行政法人 放射線医学総合研究所 鎌田正 氏)
「PTCOG(ハイデルベルク開催)への参加報告」
(独立行政法人 放射線医学総合研究所 北川敦志 氏)
「医療用加速器へのエネルギー貯蔵装置の適用について」
(国立大学法人 筑波技術大学 佐藤晧 氏)

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